へ向かう。何か、呟くような聲が聞こえたけれど、反応するのも面倒なほど眠たかったので健人は無視して階段を上がっていった。歩が友達の家へ行ってくれるのは、非常に嬉しかった。誰かと一緒に居るより、一人で生活しているほうが斷然気が楽だ。好きな時間にご飯を食べて、好きな時間に眠ればいい。することなすこと、誰にも幹渉されない時間が1週間だなんて短いとまで思った。
時間を無駄にしたくないと思ったが、別段、何かしたいことも特になく、健人は部屋に戻ってベッドへダイブする。スプリングが軋んで健人の體を數回揺らすと、冷たい風が體に當たった。パジャマの隙間からク��椹‘の風が入り込んできて、健人は身震いした。直接、體には當たらないようにしているが、風が流れてきたようだ。布団を被ればちょうどいい溫度にしてしまったため、布団を被っていないと少し肌寒かった。
一度、覚醒してしまったせいか、眠ることが出來ない。夏休み中、少しぐらい不摂生な生活を送っても罰は當たらないだろうと、起き上がって1階へ降りることにした。
階段を降りると、リビングにはまだ電気が付いていた。歩が消し忘れたのか、それとも、まだ歩が中に居るのかは階段の扉を開けなければ分からない。ドアノブに手をかけたところで、中から聲が聞こえた。
歩が電話で誰かと喋っているのだろう。內容までは聞き取れないが、ここまで來て部屋に引き返すのも嫌なので、健人は階段の扉を開けた。ソファ��俗�盲皮い霘iが振り返り、目が合う。右手に持った攜帯電話を耳にくっ付けている。こんな深夜に電話する相手がいるなんて、友達が多いと自負しているだけはあった。
電話している狀態だったことに安堵し、健人は冷蔵庫へと向かう。冷やしてあるコ��藥‘を手に取り、棚からコップを取り出して並々と注いだ。
リビングからは楽しそうな歩の聲が聞こえてくる。何を話しているかは分からないが、時折、笑い聲が聞こえて健人は顔を上げた。リビングと向き合うように作られたキッチンからは、リビングの様子が伺える。健人に背を向けて話している歩がどんな表情をしているかは分からない。しかし、聲からして楽しそうなので、笑っているのだろうなと思った。決して、健人には向けない笑みで。
健人は歩から目を逸らして、冷蔵庫にコ��藥‘を仕舞う。冷蔵庫のドアを椋Г幛郡韌瑫rに「じゃぁね」と、別れを告げる聲が聞こえてどきりとした。タイミング的に、このままでは顔を合わす可能性が高い。それでも気にしていては仕方ないと思い、健人はすぐに振り向き、コ��藥‘を淹れたカップを手に取った。
視界にリビングが入る。先ほどまでいた歩は姿を消していて、顔を上げると歩は真橫に居た。
「……邪魔なんだけど」
低い聲が聞こえて、健人は眉間に力を入れた。歩は無表情で健人を見下ろしていて、キッチンのど真ん中に立っている。邪魔だと言われても、真ん中に立たれていては動くことも出來ない。
「お前も邪魔だよ」
はっきり言うと、歩が不服そうに橫へずれた。その隙間から、健人は抜けるようにキッチンから脫出する。やはり、想像していた通り、両親が居なくなった瞬間、雰囲気は一気に悪くなった。いくら歩のことが嫌いだと言っても、言い爭ったり揉めたりなんかはしたくない。出來るだけ関わらないように、健人は2階へと駆け上がった。
部屋の中に入ってから、貯め込んでいた空気を吐き出す。アイスコ